デザートが出来るまで

今の季節、コースの最後にこんなデザートをお出ししています。
 
【よもぎ入り蕎麦豆腐の葛焼き風とラム酒風味の黒豆きな粉のアイスクリーム】
 
 以前、湯島の料理屋さんで頂いた料理からヒントをいただいて出来たデザートです。
その料理屋さんではコースの最初に胡麻豆腐を葛焼き風にして出していて、それがそのお店のちょっとした名物になっていました。その日は、刻んだフキノトウが入っていて、とてもおいしい一品でした。
 
 感動の余韻が残っているうちにと、さっそく翌日ウチで再現を試みると、二回目でほぼ同じような出来栄えの焼き胡麻豆腐を作ることが出来ました。
 「でも、これをそのままうちでお出しても単なるパクリだよな」と思い直し、
 「うちはお蕎麦屋だから、やっぱり蕎麦豆腐でしょ!」ということで、胡麻を蕎麦粉と豆乳に変えて再試作。なかなかいい感じの蕎麦豆腐の葛焼きになりました。
 
しかしながら、「これをうちのコースの最初の一品でお出しても、やっぱりパクリはパクリだよな」と思い返し、
 「いっそのことコースの最後のデザートととして仕立て直してみるか?!」とコペルニクス的発想の転回に。
デザートですから、塩味を和三盆糖に、フキノトウはよもぎに変えて作り直してみると、草餅を思わせる素朴だけれど上品さが漂ういい感じの甘味に変わりました。しかも、表面を葛焼き風に焼くことで、外と中の食感の違いも出て、口に入れると思わず頬がゆるんでしまいます。
 
 「でもこれって、このままだと熱々のデザートだよなあ。何か冷たいものと組み合わせたい! 何が合うだろうか?
  これって草餅みたいだし、草餅と合う食材は、あずきときな粉だよなあ」とまで考えたとき、
 「そうだ、きな粉のアイスクリームだ!」と閃きました。でも、普通のきな粉のアイスクリームはすでに世の中に存在しているので、このままでは面白くもおかしくもない。
そこで、前から気になっていた食材・黒豆から作られたきな粉と甘味には沖縄産の黒糖を組み合わせてみました。出来上がったきな粉アイスと焼いた蕎麦豆腐を一緒に盛って食べてみると、熱々と冷たいのの温度の違いが心地よい食味となって舌の上でとろけます。
 
 「でも、もう一ひねりしたい! アイスの甘さにアクセントがほしい!」と考え直し、
 「黒糖と同じサトウキビが原料のラム酒は、きっと合うはずだ!」と再びの閃き。
 隠し味程度に入れるべきマイヤーズラムを、隠れないで主張するぐらいまでの量を加えると、きりっと引き締まった甘さの、お酒の後にもピッタリの大人味のきな粉アイスクリームに見事変身。
 仕上げには和三盆糖から作った黒蜜を少しかけ、ラム酒に付け込んだレーズンをトッピングしてみました。
 
と、いうことで思考と試作の繰り返しの果てに、原作の面影をわずかに残したオリジナルデザートの出来上がりです。
 
 
きな粉アイス.JPG