青梅の蜜煮

毎年、梅雨の季節になると、青梅を蜜煮にしてコースのデザートとしてお出ししています。

仕入れた時はきれいな緑色をしている青梅ですが、針打ちしてしたり塩もみしたり下ゆでしたりしていると、あせた黄色に変色してしまいます。

それを蜜煮にしていく過程で再び鮮やかな緑色に戻していくのが料理人の腕の見せ所でもあります。そこで登場するのが銅鍋です。弱火でじんわりと火を通していくと、銅のイオンと化学反応を起こし黄色かった梅が少しずつ緑色に変化していきます。

初めて青梅の蜜煮を食べたのは、20代前半に京都の貴船で川床料理を頂いた時でした。京都市街から程よく山中に入った自然豊かな森の中、新緑のモミジの屋根の下、清流の上に設けられた川床のお座敷で、目にも鮮やかな緑色にぷっくりと蜜を含んだ青梅のデザートを頂いたときに、いつか自分もこんな料理を作ってみたいと思いました。

その後の和食の修行時代には、どの店でも青梅を扱う機会がなかったので、結局誰からも青梅を煮る技術は教わることがないままに実家に戻ってきてしまいました。

さて、それからが試行錯誤の連続でした。物の本を読んだり、高価な銅鍋を購入したりして青梅を色鮮やかに炊こうとしても、ほとんど自己流なのでなかなか緑色にならないのです。一年目は緑色に煮ることをあきらめて、黒糖の蜜煮にして色をごまかしてしまいました。

二年目にようやく満足のいく蜜煮に仕上げることが出来ました。ポイントは、炊く温度と時間でした。

青梅は、私にとりまして修業時代からの思いを叶えた感慨深い食材の一つです。

青梅を炊いたシロップもとても美味しいのでかき氷状のちょっと粗目のシャーベットにしています。

 

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