春の味覚 筍と白魚

立春を過ぎ、日中は少し寒さも和らぐ日が出てまいりました。こうなりますと、春の訪れが待ち遠しくなってきます。

築地市場でも、春を告げる食材が多く出てくるようになってまいりました。

今週から、筍を仕入れ始めました。あさだでは、これからの季節、若竹そばに筍刺身、土佐煮と大活躍するエース級の食材です。本日は、熊本産の筍を仕入れましたが、しばらくは九州地方のものをメインに使い、気温の上昇とともに静岡や京都、石川県と日本各地の筍に変わっていきます。それぞれの産地で微妙に違う筍の表情や味、食感を感じながら料理をするのも、楽しみのひとつです。

白魚も、私の大好きな春の天ぷらの食材のひとつです。北海道、青森県・小川原湖、島根県・宍道湖などいくつjかの名産地から仕入れますが、これは茨城県・涸沼産です。いずれも、汽水湖、汽水域と呼ばれる河川からの真水と海水が入り混じるやや塩分濃度の低いところで、そこが白魚の生息域です。昔は、隅田川の河口域・今の佃島周辺でも、大量に獲れたといいますから、本当にうらやましい話です。漁火を灯しての白魚漁は、江戸の春の風物詩で、そこで獲れた白魚は、徳川の将軍家に献上されていました。そこからでしょう、白魚は別名「トノサマウオ」と呼ばれています。

江戸前の白魚漁は大正期まで続いたそうですが、その後の河川と海の環境の悪化で、東京湾からは白魚はいなくなってしまいました。江戸に春を告げる白く可憐な魚たちが、かつてはすぐ身近な川をたくさん泳いでいた。そんな江戸の昔へのノスタルジーな思いが、私が白魚が大好きな理由の一つなのだと思います。

 

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